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噂を広めた奴は、きっと家に嫌がらせをするつもりだったのだろう。
効果てきめんだよ。まったく。
不気味な藪の間を抜けるとその先は細い道路になっていて、そこをもう少し行けばコンビニに着くようになっている。普段はそこそこ車の通りも多くて賑やかだけど、こんな夜中では通る車も無くやけに静かだ。
そこそこの交通量があるだけに一応バス停なんかもポツンとあったりするんだけど、こんな時間ではさすがに終バスも出ていて利用者はいない……かと思いきや、人が一人立っていた。
しかも、これだけの雨量で傘を差していない。
白いワンピースが雨に濡れて、割と露骨に透けてしまっているのだが、それは別にいいとして……。
怖い。もしや僕は新たな怪談を目撃する羽目になってしまったのだろうか。
とは言ってもさすがに普通の人だったら可哀そうなので、恐る恐る近づいていって様子を見る。
濡れた髪が顔にかかって、表情は窺い知れない。だが鳥肌が立っていたので、とりあえず幽霊の類ではないことを確信した。
「あの、大丈夫ですか?」
こんな状態で大丈夫なはずがないだろうとも思ったが、ただの挨拶だと思って声を掛ける。その人はわずかに震えたように見えたが、返答はない。
仕方なく、もう一度声を掛ける。
「びしょ濡れですけど、傘とかないんですか?」
またどうでもいい質問をしてしまったが、なんとか反応を引き出せないだろうかと期待する。だがやはりまたわずかに震えただけで、なんの返答もない。
このままでは埒が明かないし、僕としてもどうしようもない。どうしようと少し迷ったところで、僕は彼女に差していた番傘を押し付けて、とりあえずこれ差してください、とだけ言ってコンビニまで走った。
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