新月

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「……そんな顔して俯かれちゃうとさ、俺が虐めてるみたいでしょ。まぁ……君にしてみれば、そうなのかもしれないけどさ」 呆れた笑いを含んだ声で言われ、ハッとなって顔を上げる。 「いえ…そんな事は…」 情けない事に、必死に絞り出した声は、涙声で少し震えていた。 すると、今度は片瀬さんがギョッとした表情になって眉を下げた。 「あー、いやー、泣かせるつもりはなかったんだけど……本当に。なんか、黒崎くんって構いたくなっちゃうんだよね。いや、本当にごめんね」 少し焦っている様子の片瀬さんに、首を横に振って、涙を手で拭う。 「すみっ…ませ…俺の方こそ……泣くつもりなんて…すみません」 いい歳した男が、少しキツい事を言われたくらいで泣くだなんて……。 恥ずかしいというより、自分が情けなさすぎて嫌になる。 「あのね、俺が苛つくのは、君が自己否定ばかりしてるところだよ。つまり、何が言いたいかっていうと…もう少し、自分に自信を持ってみたらっていう事で………いや、その…ごめん」 困ったように頭を掻いた片瀬さんは、ポケットからハンカチを取り出すと、俺の目尻に溜まった涙を拭い取るようにして拭いてくれた。
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