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「どうして謝るの?黒崎くん、何もしてないでしょ?そうやってさ、意味もなく謝ったりするの止めた方がいいよ。人によっては不快に思う人もいるだろうからさ」
呆れた……というよりは、少し小馬鹿にしたような苦笑いを浮かべ、片瀬さんが鏡越しに俺を見る。
その目を、正面から見据える事が出来なくて、俯き加減の俺は、一瞬だけ目線を上げてから、また伏せた。
神谷さんとは違った意味で、この人が苦手だ。
何ていうか、全てを見透かしたような物言いをされると、心に後ろ暗いところがある俺は、どうしても苦手意識が働いていまう。
それに、人を少し馬鹿にしたような表情で見てくるから、自分に自信がない俺は、どうしても卑屈な気持ちになる。
「……っ」
謝ろうとして、不意に神谷さんから言われた言葉を思い出した。
『謝る時は、ちゃんと相手を見て謝れ。誠意が伝わらない』
慌てて顔を上げ、鏡越しではあるけど、片瀬さんの目をちゃんと見る。
「あの、すみません…心配を、お掛けしてしまって、申し訳ないなって思って……その…そういう意味での『すみません』だったので…不快に思われたのなら、ごめんなさい」
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