新月

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すごく辿々しくて、拙い説明だったと、自分でも思う…。 案の定、片瀬さんは、俺の説明に吹き出して、おかしそうに小さく笑い出した。 ………笑われた。 シュンとして俯くと、片瀬さんは笑いながら、「違う違う」と否定する。 「黒崎くんってさ、言葉足らずだよね。説明下手でも、そうやってちゃんと伝えてくれれば理解出来るのに。受け身だけじゃなく、伝える努力って大切だよ」 『言葉足らず』 その言葉が、深く胸に響いた。 ……確かに、『自分』っていう事に関して、最初から諦めてるっていうか、ちゃんと相手に伝えようとはしてこなかったかもしれない。 そうか……それで、誰かを不快にする事もあるんだ。 一人考え込んでいると、「それにしてもさぁ」と、片瀬さんが会話を繋げてきた。 「今日って、少し暑かったよね」 「え?あ、はい…」 突然の話題転換に、戸惑いながらも答える。 そんな俺に、片瀬さんはクスリと笑って身を寄せて来た。 「え…?」 何…!? いきなり近付かれ、パニックを起こしそうになるほど驚く。 慌てふためく俺をスルーして、片瀬さんは、節くれだった長い指で俺のシャツの襟を掴むと、それを引っ張った。
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