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「暑いからネクタイ緩めたくなるのも分かるけど、こういうのは、人に見せない方が良いと思うよ?」
「え?」
揶揄いの口調で言われ、鏡の中の自分を見る。
すると、掴まれ広げられたシャツの間から、赤い痕が目に入った。
これ……まさか…。
ハッとなり、慌てて手で隠すと、パッと片瀬さんが襟から手を離す。
「黒崎くんに、『そういう相手』がいるなんて、初耳だなぁ」
「ち、違っ…!これは、そういうのじゃ…!」
手で隠し、居た堪れなさに身体を縮める。
すると、更に身体を寄せて来た片瀬さんが、掠れ声で耳元で囁いた。
「まぁ、相手が誰なのかなんて、直ぐに分かるけどね」
「……っ!」
驚いて顔を上げると、クスリと笑う片瀬さんと目が合った。
「一颯だろ?」
……どうして、分かったんだろう。
やっぱり、神谷さんが……。
「…ど…うして………何を…知ってるんですか…?」
問い掛ける声が、震えている。
もし、知られたら……知られていたら…。
そう思うと、とても恐ろしくて仕方がない。
「君と一颯の事?同じ高校だったんだってね。俺が聞いてるのは、それだけだよ。安心した?」
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