新月

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神谷さん…話してなかったんだ……。 でも、それじゃあ、どうして……。 訳が分からなくて混乱する俺を、鏡越しに見ながら、片瀬さんが薄く笑う。 「聞いてなくても、君の様子と一颯に対する態度を見れば、過去に何があったのか、何となく分かっちゃうんだよね」 片瀬さんの言葉に、ギクリとした。 俺……そんなにあからさまだっただろうか…。 「君にトラウマを植え付けたのは、一颯だろ?違う?」 「……っ!」 聞かれて、息を飲んだ。 見ているだけで、そこまで分かるんだろうか。 片瀬さんの鋭い観察力に驚いた。 ………だからこそ営業に向いているんだろうな。 よくよく思えば、片瀬さんには色々と注意される事が多かった。 それも、その観察力があればこそなのかもしれない。 「無言の肯定ってやつ?まぁ、いいんだけどね。君のコミュニケーションに問題があるのは、そのトラウマの所為……つまりは、一颯の所為って訳だ」 淡々と話を続ける片瀬さんに、この人は何が言いたいんだろうかと考える。 何が目的なんだろう…。 それとも、何か探りを入れられてるんだろうか。 「何が……言いたいんですか…?」
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