新月

18/25
前へ
/331ページ
次へ
「そんなに警戒しなくていいよ。別に、君や一颯を、どうにかしたいとか、そういう訳じゃないから。ほら、そんなに怯えないで」 余程、酷い顔をしていたのか、片瀬さんが苦笑しながらそんな事を言う。 目的も分からず、一番触れて欲しくないところを触れられて、これで警戒するなと言う方が無理だ。 ビクビクと怯える俺の様子に、片瀬さんは、また苦笑する。 「……って、言われても無理か。そりゃそうだよね。ごめん」 戯けた口調で謝った片瀬さんは、スッと俺から離れて、距離をとった。 思っていた以上に緊張していたらしく、その距離間にホッとしている自分に気付く。 過呼吸にならずに済んで、本当に良かった……。 「なんていうか、君と一颯を見てると、焦れったいんだよね。ついつい口出ししたくなるっていうかさ」 「………はぁ…」 言われている事がよく理解出来なくて、曖昧な返事を返すと、また苦笑された。 「黒崎くんさ、一颯の事、気になってるんじゃない?」 「え……?」 片瀬さんの言葉に、瞬間的に心がザラついた。 行き着きそうになる心の先に、慌ててストップをかける。 駄目だ…。 それだけは…。 オ願イダカラ…気付カセナイデ……。
/331ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2269人が本棚に入れています
本棚に追加