新月

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遮るようにして強く否定した俺に、片瀬さんは少し目を見開いた。 「あ……」 咄嗟に出てしまった大きな声に、俺自身、とても驚いて、気まずく思いながら片瀬さんから視線を逸らす。 「……すみません、大きな声を出して……でも、俺は…」 「俺が口出しする理由、本当は、まだあるんだよね」 謝り、弁明しようとした俺を、今度は片瀬さんが静かな声で遮った。 「え?」 「君さ?自分だけが辛い思いをしてるとか思ってない?」 「………」 まさか、そんな事を言われるとは思っていなかった俺は、驚きとショックで頭の中が真っ白になる。 何を言えばいいのか分からなくて、声も出ない。 「トラウマ抱えてるのが、自分一人だとか勘違いしてない?黒崎くんの頑なさとか、そういう態度見てると、何か、そう思えてくるんだよね。この世界で、自分一人が不幸を背負ってますってさ」 「そ…んな……そんなつもりは」 そんなつもりなんて、全くなかった。 自分が幸せとは思えないけど、それでも、『自分一人が』なんて風には……そんなつもりはなかったのに…。 他の人から見たら、俺は、そう見えるんだろうか…。
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