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「お前が俺に従順でいれば、『あの事』は、俺とお前だけの秘密にしてやるよ」
囁いて、神谷さんは俺から身体を離した。
カタカタと震えながら少しだけ振り向く。
涙で霞む視界の向こうに、昔のように優しく微笑む神谷さんの顔があった。
「クロ?」
声も……その表情も、とても優しく甘いのに……。
「分かったな?」
まるで、全てを絶望へと誘う悪魔のようだ。
何も答えられないでいる俺を置いて、神谷さんは資料室を出て行った。
ズルズルとその場にへたり込んだ俺は……。
少しだけ見え掛けていた希望を握り潰され、心を握り潰され、目の前に広がる絶望感に少しも動けなかった…。
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