新月を手折りて

望まない再会

＊望まない再会・2＊

「という訳で、新人の君達には、暫くの間は育成係と一緒に仕事をしてもらう。分からない事、困った事があれば、必ず育成係に聞いてくれ」

営業部、企画営業課に配属先が決まった俺は、目の前の光景に、地獄の底に突き落とされたような気分になった。

企画営業課の新人は、俺を含めて三人。

一人は、入社式で隣に座っていた彼だった。

「佐藤譲（さとう ゆずる）です。先輩方に学んだ事を、どんどん吸収して、凄い営業マンになりますので、宜しくお願い致します！」

色素の薄い茶色い髪に、甘さを感じさせる容姿、そして柔軟な物腰と人懐こい笑顔。

少し一緒に行動しただけで、彼が営業向きだと直ぐに分かる。

「佐藤は、三年目の片瀬（かたせ）が担当する。片瀬、挨拶」

多田（ただ）課長に言われて、長身の男性がヒラヒラと手を振る。

「片瀬孝宏（かたせ たかひろ）です。まあ、そんなにかしこまらないで、力抜いてリラックスしてよ。宜しくね」

人当たりの良さそうな笑顔と、気さくな口調に、隣に立つ佐藤の身体から力が抜けるのが伝わってきた。

「望月梨花（もちづき りか）です。まだ右も左も分かりませんが、早く仕事内容を覚えて、一人前になりたいと思います。宜しくお願い致します」