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新聞を読んでいると地方の記事に差し掛かる。行方不明事件が起きているというのに、まだ公式には発表されていない為か記事はさし当たりないのが多い。ボヤ騒ぎや事故と珍しくもない記事ばかりだ。今は穏やかな記事が続いているが、ゴシック誌にはすでに、行方不明は事件として扱われている。いずれば、地方面だけでなく表紙や裏面を記事が飾るようになることだろう。
「・・・え?」
記事に沿って動いていた優香の目線が止まった。昨日起きた事故や事件の記事を読んでいく中で気になる記事を見つけたから。始めは単なる読み間違いかと思ったが、記事を詳しく読んでみると、優香は背中に氷でも入れられたかのように、ゾクリとした冷たいのを感じた。
「そんな・・・!」
優香は新聞片手に階段を駆け上がると、自分の部屋に駆け込みトランクケースを開ける。教科書や制服が入ったトランクケースを漁り優香は探す。あれはそんな、奥に入れた覚えはなく、すぐに見つかると思った。けれど、あれはなかった。代わりにトランクケースから出てきたのは昨日見た、可愛らしいメモ用紙ではなく、ボロボロの紙切れだった。それに、すごく濡れていた。ポケベルの番号が一応、書かれていたが識別ができないほどに。
「嘘でしょう」
トランクケースから出てきた海水で濡れたメモ用紙に優香は怖さを感じた。
優香は幽霊に会いたいと、前から思っていた。それは、すでに叶っていたことを知った。
昨日の放課後、取材をさせてもらった水紀。彼女の名が新聞の記事に書かれていた。昨日の夜、夕海海岸で発見された水死体が水紀のモノであると確認された。
記事によると水紀は四月の上旬、友人数名と共に夕海海岸に遊びに出向いた際、波に浚われ、そのまま行方不明になっていたそうだ。単なる事故として処理された為、水紀が行方不明であるということは優香は知らなかった。
(ちょっと、待って。昨日、私は水紀に取材したでしょう)
金曜日の放課後。優香は行方不明になっている生徒と交友関係がある水紀を捜して取材ができた。しかし、その水紀がもっと前に死亡していたと記事には書かれている。そんなバカな話があるのだろうか。幽霊が取材を受けるだけでなく、行方不明になっている友人の捜索を頼む。そんな話は聞いたことがない。誰かに騙されたのだろうか。
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