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瑞樹の言う猫設定が単純に動物の猫なのは重々承知している。
でも、なんとなくこのでかい図体で別の意味としてのネコの姿を想像したら笑えてしまった。
本人はそこまで爆笑されることを言ったのかとポカンとしている。
「ヒモとかしてたのか?」
「んー……うちに好きなだけ居ていいよって言われて、家賃も飯もタダだからヒモっすよね。その分身体でご奉仕とか」
「お前ね、それを同じ職場の先輩にしれっと言うなよ」
「ダメなんすか? タダだけどその分一応誠心誠意込めてご奉仕してますよ」
「……アホ」
誠心誠意込めてセックスしてるって公表しているアホの頭をペチッと叩くと、何かネジがどこかに嵌ったのか、はっと俺の顔を覗き込んでいる。
「ヤバ、俺ってマジでここじゃヤバいっすよね。マジでタダ飯だ」
「はいはい」
「喜一先輩、俺なんでもするんで」
「はいはい」
じゃあ、俺、ゲイだから、身体の奉仕しろ――って言ったら、いくら下半身にまつわる一般常識が欠落しているこいつでも驚くんだろうか。
もしくは全力で退くか。
女大好きなこいつにしてみたら、男同士でなんて有り得ない出来事なんだろう。天地がひっくり返ってもそうならなそうなタイプだ。
「いやっマジっすよ!」
「はいはい。そしたら俺、朝弱いから起こして、ワンワン! って言いながら。それと散歩は自分で行って来い」
「へ?」
「ペット、犬設定だから。待て、お座り、お預けは厳守な」
素直に頷いている。
「あ、あとご主人様の言いつけは守るように。それと」
「まだあるんすか?」
出来上がったパスタをまだ新品で汚れのないカウンターへ置いた。
顎でそれをダイニングテーブルに持って行けと指示を出すと、急いで運んでいる。
「飯、残すのも厳禁。言いつけを守れないと」
「守れないと?」
「マジでリード付けるから」
共同生活のルールを冗談を交えながら説明した。
勿論、リードを付けるなんて、それこそ冗談なのに、瑞樹は何故か「おおっ♪」と喜びながら、パスタの前にじっと座り「よし」のオーダーが出るのを待ち構えていた。
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