第6章 犬はお散歩大好きです。

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たまに冗談で瑞樹をペット設定にしてみるけど、このアホの子はそれにムッとするどころか、毎回どちらかというと乗り気で応えていた。 リードは付いていないけど、俺の左側をずっと並行して歩いている。 平日で人通りもそんなにない街中をのんびり並んで歩いていると、なんだか本当に大型犬を散歩させている気分だった。 午前中に出てきて正解だった。 この時間でこの日差しなんだ。午後になったらもっときついだろう。 チラッと横を歩く瑞樹を覗き見ると、暑さが苦手な大型犬のようにダラダラとした表情に少しだらしなく口を開けている。 髪の毛は綺麗に染めていて、日本人独特の赤みを上手く抑えられている。 上手く染めたな、なんて眺めながら、この髪の色も犬っぽいんだなと観察していた。 それに指で梳いたら柔らかそうな毛質も犬っぽい。 「! ど、どうしたんすか?」 職業病だなって思うけど、人の髪型や髪質を観察してしまう。 横で揺れる少し長めの髪の量と痛み具合を触れて確かめていた。いきなり髪に触られて大型犬が驚いている。 「んー? お前さ、こっちの左側の髪、もう少し中だけ短くしたほうがいいぞ」 「へ?」 「毛の流れ的にこっちのほうが量がほんの少しだけ多い」 「マジっすか?」 自分の髪型だって美容師にとっては良い練習台になる。 自分で切るわけじゃないけど、一番間近でスタイリストのハサミを見ることが出来るし、何より美容師が髪型が上手く作れていないなら、お客さんはそのスタイリストに切ってもらいたいとは思わない。 「カラー上手だな」 「ありがとうございます」 「うちで切ってんの?」 「あ、はい。スタイリストの河野さんに」 河野……小さくて可愛い感じの子だ。 今、髪の色が確か赤だったと思う。 嫌味じゃないし、あまり攻撃的にならない上手な赤に染めていた。 多分、数箇所細く茶系を混ぜてあるからだろう。
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