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ゲイでもない、完全ノンケのくせに、冗談やからかうわけでもなく、普通に俺の手を取って屈むように匂いを嗅ぐなんて。
しかもにこやかに笑いながら、手が柔らかいなんて――ツッコミどころが満載過ぎて全部をスルーしてしまった。
「お前ってさ」
「?」
「本当に女ったらしなんだな」
しかも天然の、そう呟いた俺をすごく不思議そうに眺める、天然タラシは史上最強に怖いと思った。
男で先輩で
アシスタントとトップで
そんな相手に普通こんなことをするのがおかしくないのかどうか、自分の判断がよくわからなくなるくらいに
こいつは意味不明生物だ。
「帰るぞ」
ただの可愛い大型犬じゃない。
周囲の目なんて全然気にしない、そんな意味不明生物の行動は読めなくて、俺は急いでカフェを後にした。
「もう買い物は済んだから、あとは別行動でいいよ」
「えー? でもどこか行くんすよね」
「夕飯の材料買いに」
「なんだ。まだ買い物するんじゃないっすか。しかもこっからのほうが荷物増えるし」
意味不明生物の大型犬なんて、次におかしな行動を取られたら、パニックになりそうで早くどこかに行って欲しい。
スーパーに向かおうとする俺は、その逆を歩くように指示を出すけど、それこそまだ散歩するんじゃん! と後を必死でついて来る大型犬となった瑞樹と、中途半端な場所で押し問答をしている。
「荷物持ちしますって」
「いいって」
「あれ? 瑞樹?」
そこへ控え目に大型犬を呼ぶ声が聞こえた。
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