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両手を挙げて大喜びされると前言撤回するのも気が引ける。
とはいえまさか本気で居候する気じゃないよな。
「一晩くらいなら」
「え……ひ、一晩……」
あ、項垂れた。
それこそ世界の終わりが来てしまったかのように項垂れている。
「喜一、いいだろ、うちから寮扱いでいくらか支援するし」
「そういう問題じゃない」
浩介を睨み付けてみても、それがこいつには痛くも痒くもないことはわかっている。
金の問題じゃないんだ。
ゲイの俺がノンケのアシスタントを居候させるなんて、こんな面倒くさいことは本当にお断りなんだ。
「なんでもしますからっ!」
嫌だ、の一言が言えないのは、きっとこの捨て犬みたいな目のせいだ。
「家政婦でもなんでもします! 寮の空きが出来るまでで構いません! っつうか下僕で構いません!」
「はぁ?」
浩介が予想外に面白い展開になったと笑っている。
「ペット! ペットになりますから!」
「お前、アホか?」
「アホじゃなくて、ヒモだったんでペットにも下僕にもなれちゃいます!」
開いた口が塞がらない、とはまさにこのことかもしれない。
でも職場で自分を元ヒモだと公表してしまえるアホの手を、振り払えない俺はもっとアホなのかもしれない。
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