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「あっでもポチとかがいいっすか? でも今時のペットってもっと洒落た名前ですよね。何がいいだろ」
「はいはい、瑞樹」
駄犬……という名前はどうだろう。
とはさすがに口に出さないけれど、真剣にペット設定を守ろうとする姿が笑えた。
「ほら、それ持ってついて来い」
「はぁい」
本当はあいつの部屋になるはずだった。
家具は一緒に買い揃えたいとか思っていたから、今現在部屋には何もない。
ガランとした一室にいくら駄犬でも疑問を持つかと思った。
ところがちゃんとした一室分の広さに感動している。
ペットだから物置かと、とか失礼なことを呟かれて、その設定気に入ってるのお前だけだぞって言おうかと思った。
「一時的なんだから物置くなよ」
「はい!」
「って言ったそばから置物とか置くなよ。っつうかお前女のトコ転々としてたくせに、スーツケースに置物入れてるっておかしいだろ」
「でもこれ可愛いくないっすか?」
可愛く、ない。
全然。
土偶?
埴輪?
っていうか、それを持ち込まれた女も若干退くだろ。
そんな小さな置物を服よりも先に部屋の窓辺に並べている。
「ぷっ」
「あ、なんか笑われた」
ふとその奇妙な置物を並べている姿が、土の中に埋めていた宝物を掘り起こしている大型犬に思えてしまった。
「マジでペットに思えてきた」
「全然ペットで構いません」
「いや、そこはせめて人であれよ」
「だってヒモよりもペットのほうがランク上な気がしません?」
本物のペットじゃないなら、どっちもどっちだろ。
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