第2章 君は犬? 猫? ネコ?

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愛玩目的って意味ならどちらも変わらない。 そしてそれが動物相手だからこそペットっていう響きが可愛らしいものになるけど、人間がペット扱いっていうのはどうなんだろうか。 「飯は? 何か食う?」 「え? 食ってもいいんすか?」 「食わなきゃ死ぬだろ」 いちいちものすごい喜ばれるから厄介だ。 ノンケは好きにならない主義だからそこは心配してないけど、こう喜ばれると悪い気はしない。 それにこんなふうに素直に喜びを顔に出せるのは羨ましいと思った。 「腹に詰め込む、くらいの料理だけどな」 そう冷たく、少し突き放したように言ってしまうのは俺の癖。   今日は浩介が考慮して早く帰したけれど、アシスタントが仕事を上がれるのは通常もっと遅い時間帯だ。 俺達スタイリストが上がった後に、今度は自分達でカットや洗髪の練習をする。 そのカットだって出来るようになるにはまだまだ長い道のりだ。 その途中で諦めて辞めていく人間のほうが多い。 自分のアシスタントの頃を思い出して少し懐かしくなった。 あの頃はいつだって帰るのは午前様で、帰ったら飯を作るのも食べるのでさえ億劫で、死んだように眠った。 そして疲れの残った体を無理やり起こして、栄養ドリンクを一本、昼にも一本飲んで、どうにか動く。 そんな生活をしていた。 「パスタでいいか? 飯のほうがよければそうするけど」 「あ、どっちでも」 「んじゃ、早いからパスタな。犬でもパスタ食えるだろ?」 「え?」 冗談で瑞樹がやっているペット設定に自分も乗ってみたら、驚かれた。 「なんだよ」 「俺って犬設定なんすか?」 「?」 「猫設定かと」 思わず爆笑してしまった。
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