.:*:。花な散りそね・゚:*:・'°☆

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入学式も終わり、学校にも穏やかな春の風が吹き抜ける中――― 「ぬうぅぅ…あいわかった。ならばその日に来るが良かろう。手土産は要らん」 校長室で誰かと話を済ませた校長は、低く唸りながら電話を切った。 校長愛用の2号共電式卓上電話機は、校長の破壊力抜群の声を受け止め続けて半世紀以上を経ているが、度重なる修理と若干の改良にも耐え続けいまだ健在だ。 「如何致しましたか?」 校長のハバネロ苦丁茶を持ってきた教頭が心配そうに訊ねた。 「三年に一度のアレがあるそうだ」 「『三年に一度のアレ』…と言いますと……やはり“アレ”でございますか」 「まったく…この時期は行事がないに等しいと言うのに…」 校長は一口でハバネロ苦丁茶を飲み干し立ち上がると、粉砕しそうな勢いで職員室へ通じる戸を開けた。 「二週間後に三年に一度のアレがあると連絡があった。明日の職員朝会までに何が適しているか考えておけ!」 教師達に衝撃が走る。 「この時期とは厳しい…入学式も終わり、行事が何もない」 「ああ…まだ学校にも慣れていない新入生を参加させるには限度がある。今からとなると…」 教師達はざわつき始めたものの、話はまとまる気配はない。 「“アレ”とは何でおじゃる?」 国語担当教師・玉袋慰成麿(たまぶくろ いなりまろ)が、技巧担当教師・三斉流武男(みさいる たけお)にこっそりと小声で聞いた。 「玉袋先生はご存知ないと?ああ…前回は海外研修期間中でお留守でしたな?」 「ああ、麿がインドに半月、“カーマスートラと四十八手における保健体育から見る古文”の研修で行ってた頃でおじゃるか。なら知らないでおじゃるなあ」 玉袋先生は納得できたのか『なるほどっ』と手の平をポンッと握り拳で叩く。
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