2人が本棚に入れています
本棚に追加
「り、竜斗…桜那先輩凄く…慌ててるよ…?」
見かねた唄音が竜斗に尋ねるが竜斗は「気にするな、疲れるぞ」と薄情に切り捨て桜那はうわーん!、と大袈裟に言いつつ唄音に抱き着くと唄音はあやすようによしよし、と苦笑しながら撫でて甘やかせているが色刄が容赦なく「冬黒さん、君実技単位危ないけど試験では温情点は無しだからね」と追い詰めると続けて数魔が「自己責任だな、其れに今回は兄さんが審判だから採点は厳しいだろうな」と残酷な現実を突き付ける黒宮兄弟に対しまぁまぁ、と発言を抑えさせに掛かっている未鹿と零香のお陰か其れ以上二人は何も言わなかったが桜那は「試験やだ試験やだ」とガタガタ震えながら呟きまた唄音に甘やかされていた。
其れを見ていた社と暁も哀れに思ったのか「休み時間練習しようか」と持ち掛けており震えたままこくこく、と頷く桜那は最早涙目であった。
桜那は何故この学校に合格し何故留年しないのか不思議な位魔術実技が危うく、周囲からは何か裏の手があるんじゃないのかとか囁かれ続けているレベルである。然し筆記は非常に優秀でおおよそ其れで補えているのでは無いかとも考えられる。
今回試験範囲になっている魔術はユグドラリオン、リエクシア、アヴェニアの三つである。
ユグドラリオンは保有属性に関係無く使用できる中級と上級の中間付近に振り分けられる風と雷の攻撃魔術で、内容は至ってシンプル。圧縮した自分の魔力を一気に解放し鎌鼬を起こし其れに雷撃を纏わせ術者の思うがまま向きを操作するという操作型遠距離攻撃。
リエクシアも保有属性に関係無く使用できる中級補佐魔術で術者の回避能力と対象の防御力を跳ね上げる。
アヴェニアは保有属性に多少左右されるが基礎は関係無く使用できる近距離斬撃魔術。術者を中心にドーム状の保有属性の斬撃を数回放つ。
試験はユグドラリオンを使い設置される34の的を焼き斬りアヴェニアで審判が作る有象無象を出来るだけ多く倒しリエクシアで審判の攻撃を何れだけ凌げるか見た後成績順に割り振った生徒同士で組手を行うといった複数混合型である。
今回は技量と我慢強さと判断力を見るものであり各自の個性が強く出るものとなっており生徒は予習を欠かさないのだが…桜那はすっかり試験の存在を忘れていたようだ。
最初のコメントを投稿しよう!