第一幕-異世界-

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「状況は、何となくわかった。ところで…お前ら、誰?」 「ボクは眠りネズミのティムロット・キャンベル。こっちの無愛想なのが、マッドハッターのアルフレド・レーナス。宜しくね、アリス♪」 ティムロットはニコニコ笑いながら俺に抱きついてきた。その様子にアルフレド、と紹介された黒づくめのヴィジュアル系の男が溜息をつく。 「ティムロット。先程からアリス様に馴れ馴れしいぞ。自重しろ」 アルフレドに指摘されたティムロットは、口を尖らせながら渋々俺から離れた。俺は、先程から抱えている疑問を投げかける。 「あのさ…アリスって何?俺の事?」 「んーとね、詳しくは女王陛下が話してくれると思うけど。アリスは、キミだよ。雰囲気は変わってるけど間違いない。ボク達を生み出してくれたのがキミ。だからアリスはボク達にとっては創造主。大切なんだよー」 ティムロットがにっこり微笑むと、アルフレドもまた無言で頷いた。 誰か助けてくれ。頭の回転が追いつかない。つまりここは、俺が昔書いた小説の世界。こんなキャラクター居たっけ、とか思い出せないけど。重要なのはそこじゃなく。なんで俺、こんなファンタジー体験してんの?って話。草とか周りの自然は本物だし、ティムロットだって人間の感触だった。もう成人して三年過ぎてんだぜ?こんなファンタジー体験しました、とか言った日には人間をやめる羽目になるレベルだぞ。頭を抱えて唸っていると、アルフレドが俺を急に抱え出した。 やめろ!成人過ぎて野郎に担がれるとか恥ずかし過ぎる! 「おいおい、降ろせ!どこに行く気だよ!?」 アルフレドは不思議そうに俺を見つめてくる。 「頭を抱えていらっしゃったので、気分が優れないのかと判断致しました。女王陛下の元へ貴方様をお連れします」 …訂正。アルフレドはサイコパスじゃなくて、天然だった。こんなキャラクター作りやがって…!作者呪うぜ、この野郎…って作ったの俺じゃん。ティムロットはアルフレドに担がれている俺を見て楽しそうに笑った。 「あはは、アルは天然入ってるからねー。アリス、観念した方がいいよー。城まで結構道のり長いから、そのままのがいいかもねっ」 くそっ…、他人事みたいに楽しそうに笑いやがって。はあ…暴れても降ろしてくれそうにねーし、もういいや。何だか一気に疲れた。大人しくしてよう…。俺は諦めてアルフレドに担がれる事にした。
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