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アルフレドの肩に担がれ、ゆらり揺られてどの位経ったのだろう。時間を計るものがないからあまり時間感覚がない。ピタリと急にアルフレドが歩みを止めた。周りの景色からするに、目的地にはまだ着いてないようだが後ろから着いて来ていたティムロットも歩みを止めている。
二人の視線の先に何があるのか、俺からは全く見えない。
「どうしたんだ?女王って奴の所、行くんじゃないのか?」
「ダメ。キミは、大人しくしてて」
今の所、明るい印象しかないティムロットの顔が心無しか強張って見えた。…なんなんだ?
「アリス。貴方が、アリス」
ふと、どこかで聞いたようなか細い声が耳に入ってきた。
「何故貴様がここに居る、白うさぎ」
白うさぎ。
確かーーノートの一番最初のページに書いてあった。
私は罪深き、白うさぎ。私を殺して、と。この声の主があの奇妙な一文を書いたのだろうか。俺はアルフレドに降ろすように言った。危険だ、と止められたがどうしてもこの声の主が気になる俺はアルフレドの制止を振り切った。
俺の前にいたのは、可憐な少女だった。
銀色の綺麗な長髪。けれど、どこか虚ろな紅い瞳。全身はフリフリの所謂ゴスロリファッション。…どう見ても、普通ロリータファッションの女の子。何処が危険なんだ?
「ええっと…、君が白うさぎ?」
「そう。私は罪深き、白うさぎ」
女の子は単調に俺の問いに答えるだけ。感情が、あまり感じられなかった。
「名前は?俺は颯斗。君にもあるんだろ?」
「…名前…。ハヤト、いいえ。貴方は、アリス。わたしは…」
女の子は小さく呻き、その場に座り込んだ。俺が駆け寄ると、ティムロットの慌てた声が届く。
「アリス、駄目!」
「…え?」
突如女の子がうっすらと笑った。髪の色が銀色から黒に変わり、先程の虚ろな雰囲気から、妖艶な雰囲気へと変わっていく。髪の下にキラリと光る紅い瞳が、今は不気味に見えた。
「わたしは、リデル。黒うさぎ。貴方を、ずっと待ってたの」
リデル、と名乗った女の子は俺の肩に腕を伸ばし、にっこりと微笑んだ。
「君は、一体…!?」
「早く、白うさぎを見つけてあげて。あの子は邪魔なの」
怪しく笑うと、リデルはすっと目を閉じ、俺の唇にそっと自分の唇を重ねて来た。禍々しい黒い光が俺とリデルを包む。アルフレドとティムロットが何かを叫んでいるが、聞こえなかった。
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