序章

11/18
前へ
/1822ページ
次へ
 この第2次地球降下作戦とでも言うべきジオンの作戦行動は東欧での戦いと同様にジオン軍の勝利によって幕を閉じた。旧態依然とした戦力しか持たない連邦軍はジオン軍の最新兵器とでも言うべきMSに対してなす術もなく、あるいは一方的に蹴散らされていった。  第2次降下作戦の5日後、ジオン軍は3回目の降下作戦を実施する。前回の降下作戦と同様、この作戦でもジオン軍は北米、キャリフォルニアベースを中心として、MSや航空機を投入し徹底的に連邦軍基地を叩いた。この2回の降下作戦によって北米に展開していた連邦軍の地上部隊の7割強の戦力が永遠に失われたのだった。  連邦軍の兵士であるトプロスは、5度の出撃の内3度をドライバーとして、2度をガンナーとして参戦し、いくつかの戦功を上げることになった。しかし、5度目の戦闘の際に負傷し後方へと送られることになっていた。  トプロスがメキシコシティに護送される前日、チワワに設営された対ジオン反攻作戦前線基地の付近に設けられた野戦病院の敷地内の片隅に設置されたベンチに何をするでもなく呆けたように彼は座り込んでいた。  野戦病院とは言ってもその規模はかなりの大きさを誇っている。それもそのはずでこの野戦病院はチワワの中で最大級の総合病院を連邦軍が接収して使用しているものだ。当然この病院の敷地全てを使用しているために敷地の中にいるのは軍人か進んで軍への協力を申し出た医療関係の人間しかいない。  「トプロス上等兵殿、ここにいらっしゃいましたか。」 トプロスを探していたらしい看護師がベンチに座り込んでいるトプロスを見つけて駆け寄ってきた。この看護師も軍の人間ではない。有志としてこの病院に残った民間人の一人だ。  突然かけられた声にトプロスが間抜けな声を返すと、その看護師は少し微笑みながら用件を伝えた。
/1822ページ

最初のコメントを投稿しよう!

226人が本棚に入れています
本棚に追加