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部屋の中には既に受付から連絡が入っていたことからその部屋の主人がトプロスを待ち構えている。本来は上等兵の配置換えに司令部は干渉せず各軍の方面隊の内部にある人事部において処理されるために、このような形でトプロスが陸軍司令部の人事部長に謁見することなど皆無に等しいことだった。
「トプロス上等兵、待っていたよ。」
准将の階級章をつけた男がトプロスを招きいれた。
「上等兵、今回の配属換えの件において君に了解を得ることなくこちらで決定してしまったことを、まずは詫びよう。」
まったく詫びているような様子の欠片も見られない横柄な態度で准将は話を切り出した。
「今回の配属換え宇宙軍の強い要望もあってね。本来であればどのような形であれ、こういった形の配属換えには本人の意思を確認しなければならないのだが、今回はどうしても急がざるをえなかったという裏事情がある。」
「はぁ。」
トプロスはこの准将の真意を測りかねていた。
「それに、君の意思を確認したくてもこの一月ほどは、君の所属していた部隊とは連絡が取れない状況になっていたという事情もある。」
准将は自分のデスクから立ち上がると、トプロスの視線から逃れるように部屋の片隅に置かれた書棚へとその身を移した。
「何故、自分がその配属換えに選ばれたのでしょうか?」
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