50.DACT Ⅳ

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 機体のバランスを取り戻して、再度トプロス機の所在を確認したフラーヴィオの視界に飛び込んできたのは、こちらに向かってビームランチャーを構えるトプロス機の姿だった。  短い罵倒を吐き捨てて、コントローススティックを薙ぎ倒した。ほぼ同時にトプロス機の構えるビームランチャーの砲口からビームが発射された。  放たれたビームはまだ射線上にあったフラーヴィオ機の、今さっきデブリにこすりつけたばかりの右脚部を焼き払いながら、虚空の彼方へと消えていった。  フルアーマー陸戦型ガンダム宇宙仕様のコックピット内で鼻を鳴らしたトプロスは、脚部を消失してバランスを崩しているフラーヴィオ機をその場に残して、ルンドマルクたちとブルタークが戦闘を続ける宙域へと機体を反転させた。  フラーヴィオ機がトプロス機を即座に追撃することは困難であると判断したこともあるが、それよりもルンドマルクとワンの2人であったとしてもブルタークを押さえ込むことは難しいであろうという判断から来た行動であった。     つまり、一刻も早く味方と合流することを優先したのである。 「そう簡単に行かせるかよ」  トプロス機が自機を置いてブルタークへと狙いを定めていることを察知したフラーヴィオは、それを阻止するために、未だバランサーの回復しきっていない機体に加速を掛ける。  先ほどからの体感からして、今の状態の機体であっても十分に追いつくことが出来ると判断したことからの行動だった。  だが、先ほどは違いトプロス機との距離が縮まる気配が全く見えなかった。 「どういうことだ!」  フラーヴィオが驚愕の声を上げる。確かにフラーヴィオ機は右脚部を失ったことで推力の20%ほどを失っていた。さらにはAMBAC肢として機能していたこともあり、機体の姿勢制御にも少なからぬ影響を及ぼしていた。  だが、だとしても、フラーヴィオの考えではドッグファイトとまでいかずとも追随することぐらいは可能であるとしていたのだ。しかし、無情にもその考えを嘲笑うかのようにトプロス機との距離は離れてゆく。  罵声とともにトリガースイッチを乱雑に何度も押し込む。  やけでも起こしたようにフラーヴィオ機が持つBSGが乱射されるが、ろくに照準もあっていない射撃がトプロス機に届くことはなかった。
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