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けたたましいサイレンが鳴り響く。
サイレンの切れ間を縫うように第一種戦闘態勢への移行か声高に宣言されていた。
「車長、エンジン始動しました。いつでも発車できます。」
ドライバー席に体をかがめるように乗り込んでいる上等兵が、彼の後ろ斜め上方旋回砲塔に備えられた戦車長兼ガンナー席に身をうずめている軍曹に向けて言葉を投げかけた。
「少し待て。
中隊長の車両が手間取っているようだ。俺たちは中隊長の車両に続いて出撃する。」
そういった戦車長席からはカタカタと状況を打ち込むキーボードの音が聞こえてくる。
「分かりました。このまま待機します。」
お前の準備が終わっていないだけだろ。
上等兵はそう思ったものの、中隊長の車両が発車準備にいたっていないことは事実であったためにそれ以上のことを言うことなく、首元まで出ていた言葉を飲み込んだ。
「トプス。お前、今何考えた?」
戦車長から言葉が飛ぶ。
鋭いな。
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