序章

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 その後、南極での会談の物別れを受けてこの戦争は継続されることになったわけだが、ジオン軍は2月中に動きを見せることは無く、暦は3月へと移行した。  3月1日になり、ジオン軍は開戦初戦と同じように電撃的に地球降下作戦を実行に移した。ジオン軍は東欧から中東にかけて集中的に降下を開始した。その目的は地下資源の確保。宇宙では産出されない希少金属が狙いだった。  このジオン軍の降下作戦によって連邦軍は、イタリア半島以東の地中海沿岸部分から中東、南アジアまでを失うことになった。  「この時期に訓練をするとは思えない。ジオンがここを攻めてきたとでも言うのか・・・?」  中々発車命令が下りてこないことに多少の苛立ちを感じている。考えていることが自然と言葉となって口を突いて出てくる。  トプロス・トリケスラー。それがこの上等兵の名前だった。  濃いブラウンの髪を短く刈り、澄んだ湖水のような瞳をしていた。180を越える身長と鍛え抜かれた体を窮屈そうに狭いドラバー席に押し込んでいる。  「ここは連邦軍のお膝元だぞ。それなのにジオンがここを攻めてくるわけが無いだろ。」  トプロスの頭の後ろから戦車長の声が聞こえてくる。  「訓練だよ、訓練。」  訓練なわけがないだろ。  楽観的に構える戦車長の言葉に軽い怒りを覚える。  大体なんでこの人とコンビを組まされる羽目になっているんだか・・・。
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