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「クソッ。」
土煙を上げてトプロスの操る61式戦車が急旋回をかける。先ほどまでの軌道の延長線上に緑色の鋼鉄の巨人が放つ120mmマシンガンの銃弾が着弾した。
「車長!車長!」
先ほどから何度も呼んでいるのだが、呼ばれた本人からの返事は返ってこない。確認するにしても目の前に広がるモニターを注視しなければならない関係上振り返って戦車長の安否を確認することは自殺行為であるように思えた。
トプロスの目の前には絶望の二文字が並んでいた。
味方の戦車部隊は彼の車両を残し全滅に近い状態だった。動いている車両はもはやトプロスの車両のみといってもいいような状況だった。
車両に流れ込んでくる無線は先ほどから全軍撤退の命令を声高に伝えていた。
ジオン軍の降下部隊はトプロスのいるアーバイン基地から少し離れたところに数回にわたり着陸した。その中から出現したのは緑色の一つ目をした鋼鉄の巨人だった。
3機1編隊で編成を組んでいる巨人たちは戦車を主力としたアーバイン基地の戦力とまともにぶつかった。数の上では明らかに優勢であった基地配備戦力は、その巨体に恐怖し、まともな戦闘行動を取ることなく1台、また1台と各個撃破の対象とされ着実にその数を減じていった。
基地司令部は制空権の制圧と、巨人への航空攻撃を航空基地へと要請したものの、その要請に応じる基地はなかった。それもそのはずで基地司令部が攻撃を要請したときには同じように他の航空基地も緑の巨人の急襲を受けており、アーバイン基地に対して救援を送ることなど出来ない状況に陥っていたのだった。
果たして、ユーラシア大陸西部で起こっていた惨状を連邦軍はここでも繰り返すこととなった。
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