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「宮原~、何でここにいるんだよ。サボってるのか? 俺の特別な絵をちゃんと真面目に描け!」  また知らぬ間に田中が私の後ろに立っていて、私の肩を掴みいきなり揺さぶった。 「ち、違うっ! もう! やめてよ! 描くよ! ちゃんと描くから!」 「ほ~、お二人さん。なんなの~? なんか怪しいわね」  上村さんは訝しげな顔で私達を見ていたが、急に、何かに納得したみたいに小刻みに頷きだした。そして、「なるほどね」と意味深に呟くと、私と田中を交互に見た。 「そういうことなのね」 「え? な、何が?」  私はすかさず上村さんに尋ねた。 「宮原さんが急にやる気を出した訳」 「え……」 「田中君のせいなのね」 「えっ、もう、な、何言ってんの? う、上村さん!」  私はものすごく恥ずかしくて、その話をうやむやにしようと試みたが、案の定、田中がそれに食いついてしまった。 「俺? 俺のせいなの?」 「そうよ。宮原さん、美術展出品狙うって私に言ったの。急にやる気になっちゃって、どうしちゃったのかな~と思ったら、それには田中君が絡んでるのね?」 「おお! そうなんだ! おい! 宮原! 美術展この絵で絶対狙えよ! 俺が松浦に話しつけとくから。良し! 俺が見初めたこの絵を絶対出品させてやる!」   田中はそう熱く叫ぶと、また自分のイーゼルを私の隣に移動させてきた。そして私は、上村さんと田中に挟まれるような形で、まったく絵に集中できず、ただただ筆を動かすしかなかった。
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