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「菜乃! なんか最近雰囲気変わったよね」
体育館へ続く渡り廊下を歩いている時、果歩ちゃんに背後から肩を掴まれ声を掛けられた。私は驚いて、ワンテンポ置いてからゆっくりと振り返った。
「……そう? 気のせいじゃない?」
「違うな~。なんか女の子らしくなったよ。醸し出すオーラがさ」
「何それ……」
「もしかして、恋でもしてる? 相手は、田中君とか?」
「え……」
私はドキリと心臓を高鳴らせ、その場に固まってしまった。
やはり果歩ちゃんは私を良く分かっている。私の変化に素早く気づき、さりげなく私の気持ちを探ろうとする果歩ちゃんは、やっぱりとても素敵な女の子だと思った。何で私みたいな子と友達でいてくれるのか本当に不思議で仕方がないくらいだ。
しかし、私は今果穂ちゃんにそう聞かれ、自分の気持ちをはっきりと確信したような気がする。自分が本当は田中を異性として意識することを自ら拒んでいたという事実。そして、それにはやっぱり限界があったということ。私がずっと心の奥に秘めていた田中への思いは、抑えられないくらい日々大きくなってしまっているということ……。
そう。私がこんな風に誰かを好きになるなんてことは、本当に生まれて初めてに近い経験なのだ。
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