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「違うよ……」
「え~、違うのか……残念だな~」
果歩ちゃんはつまらなそうな顔をして私を見つめた。
「何で?」
「え?……だって菜乃はそんな話私にしてくれないから、少し寂しくて。もしかしたら固い菜乃についに恋がやってきたかな~って私の勘がピンと来たんだけどね。そうか。気のせいだったか」
「果歩ちゃん……」
果歩ちゃんの私への思いを目の前で吐露されて、私は胸がぐっと苦しくなった。そんな思いを抱いていたなんて、本当に人の気持ちは声に出して言ってくれないと分からないものだと思い知り、同時にそんな自分がどうしようもなく情けなくなった。
(ごめんね。こんな友達でごめんね。果歩ちゃん。もう少し待っててね。自分の気持ちにはっきりと自信が持てるまで。お願いだよ)
私は心の中でしか果歩ちゃんにそう叫ぶことしかできなくて、しばらくお互い無言でその場に立っていたが、私が果歩ちゃんに「行こう」と静かに声を掛けると、果歩ちゃんは「うん」と頷き、私達は、体を自然と寄せ合いながら並んで体育館へ向かった。
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