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「……ありがと」
私は素直に嬉しくて、田中に振り返り、ちゃんと目を見て礼を言った。
「え? あ、うん」
田中は一瞬照れたような顔をして私から目を反らすと、また私の絵に視線を戻し、ぶつぶつと独り言を言い始めた。
「何? どうしたの?」
「ん? いや、なんかさ、この場所に行ってみたいなって、今思ったんだ」
「え?」
「なんか懐かしい気分になる。何だろう。不思議だな。おい、宮原。この絵絶対中途半端にするなよ。絶対完成させろよな」
「な、何? 急に。偉そうな態度だな」
「いいから約束しろよ。この絵、俺にとって必ず特別な絵になるから」
田中はそう断言すると、また、私の描いた絵を食い入るように見つめた。なんだかものすごいプレッシャーを与えられてしまい、私はこの展開にすごく驚き戸惑いながらも、それ以上にワクワクと心が躍り、田中が去った後は、今までとは大違いのものすごい集中力で、私は単純にも自分の絵に没頭していったのだった。
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