桜 伊織―極短編終了―

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朝、小鳥の可愛い鳴き声で目が覚めた。 「んー」 春独特の暖かな空気に、私はとても気分よく布団から出たのだが――。 「……ん?」 なんか服がきついような……。 私は鏡の前に立ち、自分の姿を確認する。 「……」 目をこすり、もう一度鏡の中の私を見つめる。 「ん、んんっ……!?」 あれあれあれあれ……。 「ちょっと待て!ってなんか声も低い!!うわぁ、まじか!うえ、えぇ!?」 なになになに、なにがどうなってこうなったんだ。 「うえい!!なんかちょっと美形だ!やったね!!ってちがーう!!」 私は膝から崩れ落ちた。 ねぇ、神様……流石にこれはないよ。 なんでちょっと美形っぽい感じの男になってるんだ。 私は――。 私は、女だあああぁぁあああ。 ちくしょう。なんて美味しくない設定だ。 あぁ、もしかしてあれか。神様がなんか変な実験してて、手が滑ってなんか女が男になる薬を私に落としたんだな。 えらく限定的なところに落としたな。まぁ、神様もおっちょこちょいなところがあるんだろう。 「しかたがないな。許してあげよう……って許せるかあぁあぁあぁ!!」 ばんばんっどんどんっ、と床を叩き感情を吐き出す。 しかも漫画とか小説とかでしか見たことのない世界が、今ここでこのタイミングで起こるのか。 もう本当に嫌な神様だな。 どこにいるか知らないけど、ちょっと文句でも言いに行くか。 すたっと華麗に立ち上がり、手がドアノブに触れたところで――。 「いやいやいやいや!!神様後回し!そして現実逃避ここまで!!今は律君にどう説明するか考えるんだ!!」 私の選択肢に会わないという言葉はない。 全力で律君に会いに行きますとも。 私が今日この日をどれだけ楽しみにしていたと思うんだ。 神様のばっかやろう。 あぁ、もう変な実験しないでよ。まぁ百歩以上譲って実験はしてもいいけど、私のところに落とすなよおおぉおおお。 泣きたくなるぜ、ベイビー。 「ってああああぁぁああ!!そんなこんなで怒ってたら待ち合わせ時間が近づいてる!あぁ、でも男になった説明思いついてないっ!絶望だ、絶望しかない……!!」 だがしかし、ここでまた考え始めたら確実に遅刻する。 「……」 ……よし、くよくよしててもしかたない。 お兄ちゃんに服借りよう。 .
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