0人が本棚に入れています
本棚に追加
朝、小鳥の可愛い鳴き声で目が覚めた。
「んー」
春独特の暖かな空気に、私はとても気分よく布団から出たのだが――。
「……ん?」
なんか服がきついような……。
私は鏡の前に立ち、自分の姿を確認する。
「……」
目をこすり、もう一度鏡の中の私を見つめる。
「ん、んんっ……!?」
あれあれあれあれ……。
「ちょっと待て!ってなんか声も低い!!うわぁ、まじか!うえ、えぇ!?」
なになになに、なにがどうなってこうなったんだ。
「うえい!!なんかちょっと美形だ!やったね!!ってちがーう!!」
私は膝から崩れ落ちた。
ねぇ、神様……流石にこれはないよ。
なんでちょっと美形っぽい感じの男になってるんだ。
私は――。
私は、女だあああぁぁあああ。
ちくしょう。なんて美味しくない設定だ。
あぁ、もしかしてあれか。神様がなんか変な実験してて、手が滑ってなんか女が男になる薬を私に落としたんだな。
えらく限定的なところに落としたな。まぁ、神様もおっちょこちょいなところがあるんだろう。
「しかたがないな。許してあげよう……って許せるかあぁあぁあぁ!!」
ばんばんっどんどんっ、と床を叩き感情を吐き出す。
しかも漫画とか小説とかでしか見たことのない世界が、今ここでこのタイミングで起こるのか。
もう本当に嫌な神様だな。
どこにいるか知らないけど、ちょっと文句でも言いに行くか。
すたっと華麗に立ち上がり、手がドアノブに触れたところで――。
「いやいやいやいや!!神様後回し!そして現実逃避ここまで!!今は律君にどう説明するか考えるんだ!!」
私の選択肢に会わないという言葉はない。
全力で律君に会いに行きますとも。
私が今日この日をどれだけ楽しみにしていたと思うんだ。
神様のばっかやろう。
あぁ、もう変な実験しないでよ。まぁ百歩以上譲って実験はしてもいいけど、私のところに落とすなよおおぉおおお。
泣きたくなるぜ、ベイビー。
「ってああああぁぁああ!!そんなこんなで怒ってたら待ち合わせ時間が近づいてる!あぁ、でも男になった説明思いついてないっ!絶望だ、絶望しかない……!!」
だがしかし、ここでまた考え始めたら確実に遅刻する。
「……」
……よし、くよくよしててもしかたない。
お兄ちゃんに服借りよう。
.
最初のコメントを投稿しよう!