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十分くらい頬を横に伸ばしていたのだが、さすがにひりひりしてきたので二人一緒に放した。
「なんかひりひりするね」
「うん。伊織、ごめん」
「あ、ううん大丈夫だよ!私もごめんね」
「俺こそ大丈夫だから、気にするな」
私は自分のひりひり頬に触れ、優しく撫でる。
「あ、そうだ。律君、今日のデートどうしよっか」
「あぁ、そうだな。たまには散歩するか」
「うん!散歩する!それじゃあここから出発で、目的地なしで歩こう?」
「おぉ」
「よーし!それでは行きましょう!!」
るんるんスキップで一歩踏み出したのだが――。
とある声に呼び止められ、立ち止まることになった。
「止まってくれてありがとう。桜伊織さん」
にこり、妖艶に笑う女性を私は知らない。
なぜ私の名前を知っているんだ。
疑問に首をかしげる。
律君をちらり見るが、私と同じく知らないらしい。
「あら、ごめんなさいねぇ。私ったら名乗るのを忘れてたわ。私は女神、リーリディナ」
「!!」
目玉がびょーんって飛び出すかと思った。
え、ええぇえええ。なんで女神様がここに。
っていうか本物なのかな。
確かに妖艶で……ん、妖艶ってことはどちらかというと悪魔っぽいような。
あぁ、まぁ、それは今はいいや。
「あの、女神様が私になんの用でしょうか」
「あ、そうそう。私ね、貴女に謝らなきゃならなくて」
「はて、謝るとは」
「私が手を滑らせて、貴女のところに性別変換薬を落としちゃったのよねぇ」
ん、あれあれあれあれ。
どこかで聞いたような話が、女神様の口から出てきたぞ。
私は、じっと女神様の顔を見つめた。
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