11人が本棚に入れています
本棚に追加
杲杲と照らされた白い壁、
よく耕された黒い土、
茶色に枯れた草…
その真ん中に、彼は立っていた。
「よお。」
声を掛けると、およそ三十とは思えない少年のような顔をパアッと明るくして、
「よお!」
と手を振って、こちらへ歩いて来た。
「どうだ?」
いつものように握手をしながら聞くと、
「どうだろうね。」と答える。
いつの頃からか、これが二人の挨拶になっている。
「これから掘り出すところなんだ。」
畑を振り返って俺と横並びになった彼は、少し緊張した面持ちだった。
俺は黙って、彼の腰の辺りをトンと押してやる。
そのまま
再び畑に歩み出した彼は、わざわざ一番奥まで行き、
枯れた株を取り除くと、一心に掘り始めた。
しかしすぐに手が止まって…
肩より上で右手をパタパタと振ると、
あとは鼻唄まじりに掘り続け、天井を仰いで声を上げた。
「女の子だったー。」
最初のコメントを投稿しよう!