画家と農夫

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俺は夜を待つ間、絵を描いていた。 リンゴと、三分の二を食べたパン。 リンゴは食べ頃のものを一つだけ、近所の果樹園の直売所で買った。 パンは、その向こうの倉庫を改装した小洒落たベーカリーで。 なんでも、店主は外国や都会で修業をしていたそうで、 果樹園の一人娘と結婚するとかで、ココに来たらしい。 そんなことに大して興味はないのだが、 そこの果実からできる酵母とやらで作った、 少し酸味のある、デカくてかたいパンが好きだった。 …まあ、そんな暮らしの断片をスケッチしていた。 だんだん、それが難しいほどに日は傾き、落ちようとしている。 もうこんな時間か… 俺は簡単な身支度をして、家を出た。
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