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嶋沢は引き寄せられるままに、俺の腿(アシ)に手を載せて地面に膝をつく。
嶋沢を見下ろす格好になり、右手で嶋沢の頬に触れる。
嶋沢の綺麗な輪郭
長い睫毛
少し硬めの黒髪
ふっくらとした唇。
俺より先に嶋沢に触れた奴……。
嶋沢に怖い想いをさせたこと全て。
俺が全てを塗り替える。
無かったことになりますように……
静かに瞳を閉じた。
嶋沢の唇に俺の唇をゆっくり重ねる。
───禁断の蜜の味。
柔らかく俺の心に残る。
唇が離れると再び視線がぶつかる。
「あ……」
嶋沢は顔を赤に染め、小さく声を漏らす。
「俺とのことだけ覚えていて欲しい。
キスも手を握ったことも……
これからのこと、すべて……」
嶋沢の記憶が俺で埋め尽くされますように……。
一年半後、嶋沢が一人で寂しい想いを少しでもしなくてすみますように……。
嶋沢は涙を必死に堪えながら、言葉にする代わりに小さく頷いた。
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