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調理室にて。
かれんとかりん、そして紫は呆然と立ち尽くしていた。
目の前には餡子を貪る南子の姿があったからだ。
そんな三人にお構い無しに幸せそうな顔をして餡子を食べる南子の周りにはつぶあんと書かれた空の袋が2袋、こしあんと書かれた空の袋が2袋。
重さにして4kgを平らげた南子は最後のこしあんの袋を開けていた。
「…南子餡子中毒だったよね」
「…やられたわ…。」
「南子ちゃん幸せそうですね」
「「……。」」
かりんは幸せそうな南子を見てニコニコ笑っているが、かれんと紫はやられたと言わんばかりにがくりと項垂れた。
そこに後ろの廊下から太一と日向と茜が歩いてくるのを見てかれんはため息をついた。
「…あんた達遅いわよ!」
「あ?どうしたんだよかれんー。」
「…あ!!」
「え…え!?」
太一がかれんになぜだか怒られているのを横目に調理室を見た日向と茜はかれん達と同じように固まった。
茜はプルプルと震えて南子ちゃん!!と大声で呼ぶと南子の元へ走り南子を怒り出した。
南子は茜を見ると顔を真っ青にしていた。
日向は隣に居た紫に事情を聞くとため息をついた。
「餡子中毒ってなんだよ…」
「…南子は餡子って聞くと無意識に餡子を求める傾向がある」
「え、無意識!?」
「気がついたら周りに餡子の入ってた袋が散乱してるんですって」
「えええ…」
日向は思った、柏餅を作るのに餡子が無くてどうするんだよと。
皆も同じ意見のようでため息をついていた。
「…どうするんだー?」
「しょうがないじゃない、南子のストッパーが誰も居なかったんだから…。」
「…もち米だけ蒸しときますか?」
「どうしましょうか…」
「…ごめんよ…みんなぁ」
「……東とかんなを待つか」
少しして大量の槲の葉を持って調理室に現れた東とかんなに説明をすると東は固まり、かんなはあははと笑っていた。
皆で作戦会議をしその日の柏餅は餡子が無いものになった。
餅に槲の葉を巻いただけのもので、皆は食べることはなかった。
柏餅を食べれなかった恨みか、餡子を食べてしまった南子とストッパーにならなかった太一の二人に職員室まで柏餅を届けさせ、皆は帰宅した。
職員室で待っていた隼人は南子と太一が大量の柏餅を持ってきたかと思えば逃げるようにして職員室から出て行ったのを見て疑問を持った。
だがその疑問が解決するのも時間の問題だと言うのをその時隼人はまだ気づかなかった。
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