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「バカ日向のせいで泥だらけになっちゃったじゃない!!」
「俺のせいじゃないって! かれんが先にカエル投げてきたんだろ…!!」
「バカ面しながらサボってるからじゃない!」
「わかったからオメーら泥流すぞー!」
「「え」」
隼人はホースを日向とかれんに向けて水量全開で水を噴射した。
田植えをやっていた日向達は昼休憩のため田んぼから出てグラウンドに居た。
女子達は足を洗い教室に皆のお弁当を取りに行き、東と太一は職員室にお茶を貰いに行った。
「うわぁ!冷てぇ!」
「きゃあああ!!」
「泥洗ってやってんだから感謝しろよなァー」
隼人はザッと泥を流すと水道の蛇口を閉める。
泥が取れた日向はヤバイと言葉を零す。
「トランクスまでグッショリだ…」
「!! デリカシーの無い事言わないでくれないかしら!!」
「…じゃあかれんは替えの着替えとか持ってきたのかよ?」
「持ってきたに決まってるじゃない…って日向替えの着替え持ってきてないの!?」
「……。」
「……太一に借りなさいよ。」
「間接下着とか嫌なんだけど…。」
「……知らないわよ! だったら保健室に行って来れば何かしらあるんじゃない!?」
(仲良いなー…。)
日向とかれんがまた言い合いを始めたのを離れたところで見ていたかんなは無意識にため息をついた。かんなは二人を見ないように体育座りをして顔をうずくめる。
(…私も普通の女の子だったらな…。)
(日向…日向とまた一緒に居れるようになったのに…。)
(ひなた…。)
かんなの目から一粒の涙が零れ落ちた。
その涙に気づいていないかんなは日向の事を思いながら目を瞑り意識を手放した。
端鞠の楠には古くからの言い伝えがあった。
楠には小さな小さな守り神が宿っているのだと。
その守り神は昔から端鞠の人々を見守っている。
「……まさかな。」
「ん?どーしたー東ー?」
「いや、なんでもない」
「早くお茶持ってかないとなー、喉乾いたー!」
東は口元のストールを直すと太一のペースに合わせて歩き出した。
後ろに流れたストールが風に乗ってふわりふわりと揺れる。
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