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「ひっく…ひっく…もう嫌になっちゃうわよ! 」
「離婚したんだからいいじゃねーかァ」
「そうだけど! …思い出してくるの…!!」
「……お前は悪くねェーから、もう忘れればいいじゃねーか」
「……。」
隼人は日陰の頭をポンポンと軽く叩いてあやしている。
酔っている日陰はポロポロと涙を流していて俯いていた。
はぁ…とため息をついた隼人は頭を掻きながら日陰を見た。
「……お前さ、そんな男の事なんて一々俺に愚痴んなよなァ」
「だって…隼人ぐらいしか言えないもん…」
「…お前は俺の気持ち知らねェからなァ…」
「え?」
日陰が隼人を見ようと顔を上げるといつもみたいに死んだ魚のようなやる気の無い目ではなく真剣な顔をした隼人が日陰を見ていた。
日陰はその目を見て学生の時に一度見た事があるなと思い出していると隼人の手が日陰の頭の後ろにまわる。
隼人の顔が近づいて来て唇に温かい感触があたる。
その感触は何年も前に一度だけ経験したことのある感触で懐かしいと思いながら日陰は目を閉じると隼人の匂いと煙草の匂いがしてきた。
角度を変えながら何度も口付けをしてくる隼人に身を任せて日陰は思う。
(……私もホントは隼人の事…)
日陰は口付けの心地よさを感じながら意識を手放した。
「……こんな状況で寝てんじゃねーよ、バカ」
隼人は唇を離した瞬間に崩れ落ちる日陰の体を抱きとめて悪態をつく。
ため息をつきながらも日陰を大事そうに横抱きにしていた。
「……ガキんちょが盗み見とはいい度胸じゃねェか」
「……!!」
「……!!」
「ったくよォ…出てこいお前ら」
隼人が草むらを見ながら呟くと顔の真っ赤な日向とかんなが出てきた。
日向は頭を掻きながらどう説明していいか悩んでいたが隼人はそんな2人を見て煙草を咥えて火をつけた。
「……黙っとけよ、たぶん忘れてるから」
「…はい。」
かんなはコクコクと首が取れるんじゃないかと言うくらい頷いていて、日向は居心地が悪そうに返事をした。隼人はそれを見ると口から煙を出す。
「……昔はなァ…遠慮してたが…」
「…?」
「今回は遠慮なんかしねェよ」
日向は隼人の顔を見るとそこにはニヤリと意地悪そうな顔をしていたが目は真剣な目をしていてこんな先生を見た事ない。
かんなも顔を真っ赤にして固まっている。
そんな2人を見て隼人は日陰を起こさないようにゆっくりと縁側の方に歩いていった。
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