14人が本棚に入れています
本棚に追加
〇ワタル少年〇
「お父さんっ。大変だよ。そこで宇宙のヒトが倒れてたんだ。助けてあげて…っ」
ゼイゼイと息を切らし、ワタルは研究所に飛び込んだ。
宇宙防衛研究所。
ワタルの父親である飯田橋博士は研究所の所長なのだ。
「…何だって?」
振り返ってから、飯田橋博士は用心深い表情になってワタルを見た。
「ワタル。宇宙のヒトに気安く近づいたら駄目だと言ったはずだろう?宇宙には悪い宇宙怪人と良い宇宙人とがいるんだ。もし悪い怪人だったら、どうするんだ?」
博士が説教口調で言う。
「悪い怪人じゃないよ。だってイケメンだったもんっ」
ワタルは不満げに口を尖らせた。
宇宙のヒトは、怪人は醜怪で、善人は美形と、ワタルは学校でちゃんと習っている。
そんな子供扱いはされたくないのだ。
「…宇宙怪人は変幻自在なんだぞ。イケメンに変身しているのかも知れないだろう?」
まだ博士は納得しない。
そう、宇宙怪人は変幻自在。
イケメンに変身して子供を騙すくらい訳も無く出来るのだ。
「…いいから。早くっ」
業を煮やして、ワタルは博士の腕を引っ張って外へ駆け出した。
最初のコメントを投稿しよう!