第1章 地球

3/97
前へ
/323ページ
次へ
〇ワタル少年〇 「お父さんっ。大変だよ。そこで宇宙のヒトが倒れてたんだ。助けてあげて…っ」 ゼイゼイと息を切らし、ワタルは研究所に飛び込んだ。 宇宙防衛研究所。 ワタルの父親である飯田橋博士は研究所の所長なのだ。 「…何だって?」 振り返ってから、飯田橋博士は用心深い表情になってワタルを見た。 「ワタル。宇宙のヒトに気安く近づいたら駄目だと言ったはずだろう?宇宙には悪い宇宙怪人と良い宇宙人とがいるんだ。もし悪い怪人だったら、どうするんだ?」 博士が説教口調で言う。 「悪い怪人じゃないよ。だってイケメンだったもんっ」 ワタルは不満げに口を尖らせた。 宇宙のヒトは、怪人は醜怪で、善人は美形と、ワタルは学校でちゃんと習っている。 そんな子供扱いはされたくないのだ。 「…宇宙怪人は変幻自在なんだぞ。イケメンに変身しているのかも知れないだろう?」 まだ博士は納得しない。 そう、宇宙怪人は変幻自在。 イケメンに変身して子供を騙すくらい訳も無く出来るのだ。 「…いいから。早くっ」 業を煮やして、ワタルは博士の腕を引っ張って外へ駆け出した。
/323ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加