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タクシーを降りると、エントランスの照明が灯る。
カチャリと音を立てて開いた扉からは、相変わらず感情のなさそうな瞳が俺を見つめた。
「わざわざ来なくても良かったのに」
「親父に言われたら断れないだろ」
すこぶる迷惑そうな表情を見せた兄貴は、それ以上何も言わないまま瞳だけで家に入れと指図する。
俺の前ではいつだって冷静で寡黙な兄貴が、あの楠田部長とねぇ…なんて呑気に考えながら俺は久しぶりの実家へと足を進めた。
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