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「そういうこと。
龍都のたった一度の過ちすら許せなかった潔癖症の冴子が、現社長の女癖の悪さを知っていてもあの人と結婚したのは……龍都とSENAフーズを守るため、そして煩わしい派閥抗争から俺を守るため」
「…自分の幸せよりも…ですか…」
深いため息を吐きながらそう呟いた俺に楠田部長は言った。
「いつか龍都が会ってくれるなら伝えてあげたいと思ったこともあったよ。
だけど彼は最愛の女を奪われた楠田歩への憎しみを糧にここまで登って来ている。
だから龍都にこの事を俺が話す事はない。
これは…あの日龍都を裏切った俺に課せられた天罰なんだと思っているからね」
…あまりに悲しすぎる楠田部長の選択に俺はもう何も言えなくなった。
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