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「…これは…」
「うん?知り合いでもいたか?」
「はい」
思わず俺も笑いがこみ上げて口角に弧を描く。
そこに記されていたのは…。
『有坂勇太郎』
そう、小雪の兄の名だったからだ。
社会勉強のためにと俺の口利きによりSENAフーズの人事部で働いている小雪の兄の趣味は、親の血を引いているのか投資。
もしかしたら、とは思っていたがまさか俺の働いている会社の株まで買っていたとは。
これはきっと使える。
そう思いながら俺は『その時』に向けて静かに動き出した。
それが百夜通いの2年前の春の出来事だった───。
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