Act.26

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しかし社会はそんなに甘いものではない事はちゃんとわきまえている。 「ありがとうございます。だけど仕事は休みません。 瀬那川のローズエクレアだけは必ず商品化したいんです」 私の言葉に楠田部長はフッと笑って頷く。 「あ、じゃあ葉月、また連絡するから。ごめんね」 「うん、映見も気を付けてね」 心配そうに私を見つめる葉月に笑みを見せ、私は急いでオフィスから出た。 会社から病院までは電車で2駅。 時間にしたら30分も掛からないのに、その時間がやけに長く感じてしまうのはそれほどまでに私の心の大半を瀬那川が占めているという事なのだろう。
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