1020人が本棚に入れています
本棚に追加
病院に着き、重厚な扉を開き彼が眠る病室へと足を進める。
さっきまであんなにも眩しかった夕陽は、雲の間に飲みこまれ茜色へと染まっていた。
酸素マスクをつけた彼の瞼は、今朝と同じく伏せられたまま規則正しい心電図の音だけが鳴り続ける。
「蓮都…ただいま」
決して返って来ない彼の声。
反応のない手を両手で握りしめ自分の額をくっつけた。
この手はこんなにも温かいのに。
あなたの声が聞こえないだけでこんなにも心が寒い。
最初のコメントを投稿しよう!