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身体だけの関係だった黒田君と葉月の過去。
けれど黒田君にとって葉月という女はやはり他とは違う特別な存在だったのだろう。
男女の愛とか恋とか、そんな簡単なものではなく。
おそらくそれもひとつの『家族』だ。
しかしゆっくりと頭を持ち上げた黒田君の瞳は、初めて見るような悲しみ色に深く染まっていた。
「では楠田部長…カナダに行って来ます」
そう言って企画室を出て行く黒田君の背中に感じたのは、まるで永遠の別れを告げられたような喪失感だった。
もしかしたら彼は瀬那川との恋愛バトルに敗北した時、ここから消えるつもりなのかもしれない。
そんな気がした───。
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