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病室の出口へ向かう私の背中に瀬那川の瞳を感じることはなかった。
それでも名残惜しくてドアの前で振り返ってみる。
しかし彼は天井に顔を向けたまま微動だにしない。
「瀬那川、優秀な部下が戻って来るのを楽しみに待ってるから」
精一杯の強がりを吐き出した私は、今にもここに崩れ落ちそうな足に力を込めた。
そしてドアノブに手をかけた時、彼はベッドから小さく呟く。
「はい、津川課長」
返って来た答えでまた涙腺が崩壊して行くのもそのままに、私は静かにドアを閉じた───。
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