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『しかし、君の方は僕の正体にたどり着いていないね?ここは僕の、アドバンテージとしておこうじゃないか』
「本当は、今にも僕に背後を取られるんじゃないかと戦々恐々としているんじゃないのか?」
カイは、大きな「戦力」であり「自分の砦」でもあったネットワークの廃墟の向こうに立つ「侵略者」に感情的で挑発的な発言を繰り返しながら物凄い速さでメモを書き、漣斗とシエラに指示を出した。シエラには「アイリの現在地確認。急いで」、漣斗には「緋色に大至急連絡、サイバー班にSDの居場所を特定させて」
漣斗とシエラは、無言でうなずくと静かに部室を出た。
「世界最凶のブラックハッカーが、詐欺集団カルトの謎の教祖様の正体、ってわけ?それとも金を積まれただけの有能な傭兵か?もしも後者なら、僕は君に興味はない。遊ぶなら僕がヒマな時にしてくれ」
カイは、とっさに感情的で挑発的な発言を繰返しながら、恐ろしいほどの冷静さで次の一手…敵に肉薄する好機を逃すまいと計算していたのだ。
(いくら頭いいからって…本当に同い年かよ。いや、同じ『人間』って生き物どうかすら疑問だ…)
緋色との電話を終えた漣斗はそんなことをチラッと思った。
部分的に消灯された薄暗い廊下の向こうからシエラが駆け戻ってきた…窓の外は真っ暗で、人の気配もない。
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