〈2〉カルトの陰謀と恋のライバル

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ミステリー研究会の仲間がSleepy Dragonなる黒幕と思しきハッカーと接触する、数十分ほど前のことである。緋色と紅森は署に戻り、「鳳雛荘における住人失踪及び大学生死体遺棄事件」の捜査会議に参加していた。異例の捜査本部の呼称以上に事件は複雑怪奇な様相を呈していた。 「この事件は鳳雛荘住人の過去を、一つ一つ洗っていかないことには解決しません。あと、5~6年前に起きた『絶対真理の王国』教団内部の内部抗争もおそらく何らかの形で関わっています」 緋色がホワイトボードに関係者全員の顔写真を貼り、幾つものメモ、何本もの線や記号で彼らを繋げていく。 「まず、201号室の住人、立花里緒菜。元の姓は『山口』。『立花』というのは亡くなった母親の旧姓です。家庭環境が複雑だったせいか、高校時代から『絶対真理の王国』に出入りしていた。 熱心な信者、というよりは行き場がなく身を寄せていた、という感じだったようです。しかし、ある時突然教団から姿を消した。 そして鳳雛荘に越してくる直前まで、東京で夜の仕事を掛け持ちし、多額の借金を作っていました」
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