〈3〉凍える姫、眠れる龍

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「だって、難関大とか医大目指している連中なんか土日、そこ専門の塾通ってるんだぜ?東京までさ」 「早いうちにやりたいことが決まっちゃってる人はそれでいいと思う。でも、だいたいの子は16とか17で自分の一生について考えろ、って言われたら重いよ。残りの人生の方が長いのに、十年ちょっとで残りの何十年間後悔しないような道を選べ、って方が無理じゃない?」 「一理ある。愛莉は…優しいよな」 「優しい?何で?普通だよ」 「優しいよ。…何て言うのかな、人間に対する見方が優しい。 正直、森村漣斗みたいに医者の息子なのに作家になりたいとか、馬鹿じゃねえの?って最初は思った。でも、ミステリー研究会のメンバーは本気で応援してんじゃん。あの変人のカイですら。…そういうの、正直ちょっとうらやましい」 「漣斗は友達だもん、周りの意見に負けて後悔してほしくないの。カイが変人なのは認めるけど、いい人だよ」 「……」 話に夢中になっていたのと、数オリが道に慣れていないこともあって、だいぶ回り道をしてしまった。 「あっ…?」
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